籠のなかの小鳥は

来たことはないけれど、 “視た” ことがある、その場所へ———

小鳥のうちから、枢(くるる)があらわれ、羽ばたいてゆく。その場所を探すために。

枢に、自分の番に導かれて、そこを目指す。


いくつもの荘厳なつくりの碑の前を通り過ぎる。

人の気配とてない。砂利を踏む自分の足音だけが、耳に響く。


「あぁ・・」
口の中で小さくもらす。

ここだわ。
たどり着いた。


ひっそりとたたずむ碑は、在りし日のその人をしのばせるのだろうか。
手入れの行き届いた様子に、わずかばかり心が慰められる。

その前で膝を折り、手を合わせる。枢もその瑠璃色の眼を閉じる。