この国へ連れてこられたのは、まだ肌寒さの残る、如月の頃のこと。
今はもう、皐月。
肌をなでる風が、濃い緑としめった土のにおいを運んでくる。
どこかで鳥のさえずる声がした。
ここから先は、一人で行きたいのです。
小鳥は、しずかに女房に告げた。
「姫様、それは・・・」
当惑し、渋る彼女らに、
「高天から早蕨が見守ってくれているから、大丈夫です。すぐ戻りますから、お願いです」
と重ねて言った。
「たしかにここには、危険などございませぬが・・・どうぞ、早いお戻りを」
はい、とうなづいて、その先へと足を進める。
女房たちに心配をかけてしまうのは心苦しいが、どうしても一人で参りたかった。
今はもう、皐月。
肌をなでる風が、濃い緑としめった土のにおいを運んでくる。
どこかで鳥のさえずる声がした。
ここから先は、一人で行きたいのです。
小鳥は、しずかに女房に告げた。
「姫様、それは・・・」
当惑し、渋る彼女らに、
「高天から早蕨が見守ってくれているから、大丈夫です。すぐ戻りますから、お願いです」
と重ねて言った。
「たしかにここには、危険などございませぬが・・・どうぞ、早いお戻りを」
はい、とうなづいて、その先へと足を進める。
女房たちに心配をかけてしまうのは心苦しいが、どうしても一人で参りたかった。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)