籠のなかの小鳥は

牛歩とはよくいったもので、とにかく歩みはのろい。

これなら自分で歩いたほうが速い、と思うのだが姿を見せてはいけないので仕方がない。


牛車に揺られること二〜三十分、ようやくその場所に到着した。
そう告げられたころには、すっかりお尻が痛くて座っているのがつらくなっていた。
自動車やバスのような乗り心地、とはいかない。


女房の手も借りず、榻(しじ)に置かれた沓(くつ)にささっと足を差し入れ、軽やかに降りてきた姫様に、牛飼童の目は点になった。


ひどく静かな、ところだ。
目の届くかぎり、白い塀が続き、かなりの敷地を有していることがうかがえる。


粒のそろった砂利が敷きつめられた小道。
両脇には楓が植えられ、したたるばかりの新緑をしげらせている。