籠のなかの小鳥は

「ああ、誰かに見とがめられたらどうしようかと」

小少将という若い女房が、ほっと息をつく。

かづらは、体調が悪い姫様につきっきりということになっているので、常寧殿に残っている。
実際は、小鳥の不在を悟られないように、帳台の隣で控えてくれているわけだが。

女房のなかから、口が堅く気が利くもの二名が選ばれて、付き添っている。


「姫様、どちらへ参りましょうか。やはり錦でしょうか?」

もう一人、尚侍という女房は大胆な性分なのか、この “冒険” を楽しんでいるふしがある。


錦(にしき)とは? と小鳥は問う。

「錦大路でございます。都でもいちばんの大通りで、それはそれは賑わっております。
外つ国からの、めずらかな品々も見ることができましてございます」


表参道やセンター街みたいなものだろうか。