籠のなかの小鳥は

“深窓の姫君” の言葉どおり、高貴な姫様はめったなことで外出しない。

厳重に邸の奥深くに仕舞い込まれるようにして暮らしている。

宮中にあっても同じことで、外に出るのは実家に下がるときぐらい。それでさえ自由にとはいかない。
そうして小鳥には、帰る実家などない。


「こうして幾重にも塀と人に護られて暮らしているだけでは、まるで———」

籠のなかの鳥だ。

生まれも育ちも籠のなかならば、それで不満はないだろうが、自分は知っている。
その外に、決して恵まれているだけではない世界があるだろうということを。


蘇芳が吐息をひとつ吐く。
「ならば、いずれ朱雀に乗せてやろうか」