籠のなかの小鳥は

「あ、ありがとうございます」
おずおずと受けとる。


「来るときに邸の庭園から手折ったもの。宮中でも見られぬ、めずらかな花なれば」
言葉少なに昴が口にする。


「黒い花を見たのは初めてです。奇麗ですね」

小鳥の手の中で、濡れたように妖艶な美しさをみせる。


「外つ国から苗を取り寄せ、庭師が腐心すること三年。ようやく花を咲かせるまでになった」

「まあ、大変なんですね。そんなに貴重なものを、ありがとうございます」


「花でさえ、三年———人なればなお」
ひとり言のようにつぶやく。


気づかわれているのだろうか。申し訳なさとありがたさが交錯する。


「———名はなんというんですか、この花」
かぐわしい香りを胸に吸い込む。