籠のなかの小鳥は

考えてみれば、自分がプレゼントしたものを人に回していいか聞かれたら、気を悪くして当然だ。


『物知らずの身で、とんだ不調法を―――』
水茎の跡もうるわしく、詫び状を代筆してくれたのは、もちろんかづらだ。


蘇芳の腹立ちが冷めやらず、小鳥がしおれるなか、珍しく昴が一人で常寧殿を訪れた。
手に無造作に花を持って。


黒の宮様と呼びならわされる昴は、非常に寡黙で四人で訪れたときなど、一言も言葉を交わさないこともあるほどだ。

しかし気弱な性質でないことは、蘇芳とのやりとりから察せられる。

素っ気ないほどの黒の直衣姿だが、石帯を留める金具は銀で、唐草模様をすかし彫りにした細工品だ。
服はシンプルに、アクセサリーで差をつける、という感じかしら、そんなことを思う。


「これを―――」
と昴が手にした花を差し出す。

初めて見る、黒い花だった。花弁は桔梗に似ているだろうか。