聞けば、小鳥の住まいどころになっている常寧殿の華やかさは、ほかの殿舎のなかでも群を抜いているという。
「姫様、この障子の漉紙をごらんになって下さいませ。季節の花を押し花にして、閉じこんでございます。凝った意匠でございましょう。
あちらの格子は、日の光をやわらげるために、透きとおった貝殻をはめこんだ、貝殻格子というものでございます。
わたくしも長く宮中におりますけれど、これほど見事な細工のものは見たことがございません」
なにも知らない小鳥のために、かづらがあれこれと説明してくれる。
姫様はもとのお国でおつらいめに遭われたから、今のご幸運があるのでございましょう、とかづらがわがことのように、小鳥の “栄華” を喜んでくれるのが心苦しい。
親戚のやっかいになっていた頃にくらべれば、人もうらやむ境遇なのかもしれないが。
しかるべき殿方が四人もいる立場も、胃が縮む思いがするものだ。
いきなり、四人のうちの誰かの后になるのだといわれても、それも一国を統べる人の――――
「姫様、この障子の漉紙をごらんになって下さいませ。季節の花を押し花にして、閉じこんでございます。凝った意匠でございましょう。
あちらの格子は、日の光をやわらげるために、透きとおった貝殻をはめこんだ、貝殻格子というものでございます。
わたくしも長く宮中におりますけれど、これほど見事な細工のものは見たことがございません」
なにも知らない小鳥のために、かづらがあれこれと説明してくれる。
姫様はもとのお国でおつらいめに遭われたから、今のご幸運があるのでございましょう、とかづらがわがことのように、小鳥の “栄華” を喜んでくれるのが心苦しい。
親戚のやっかいになっていた頃にくらべれば、人もうらやむ境遇なのかもしれないが。
しかるべき殿方が四人もいる立場も、胃が縮む思いがするものだ。
いきなり、四人のうちの誰かの后になるのだといわれても、それも一国を統べる人の――――



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)