籠のなかの小鳥は




「ひ、姫様っ!」

慌てるかづらの声もなんのその、小鳥は御簾のうちから駆け出した。

そのまま廂の間を走り———たいところなのに、どうにも着ているものがいうことをきかない。
まるで水の中を走るように、重い。


この日のためにと、かづらが織工に手当をはずみ、織りと仕立てを急がせたとっておきの装束。

単衣に七重襲に表衣に裳に引き腰まで。色目は匂うばかりの桜襲。
身に纏うと、歩くのがやっとだ。

逡巡はほんの一瞬だった。
引き腰から回された、小腰の紐をとく。

ドサッ、と音をたてて、装束が床に落ちた。
小袖姿になり、長袴をたくし上げて、小鳥は走る。

廂の間をぬけて、渡殿へ。


はやくも潤みはじめた双眸に、こちらへ渡ってくる四彩をまとう人影が映る。