飾り物、つなぎでしかない自身の境遇をどう思うのか。
至りついた境地が、なにも望まず、なにも言わず、なにも為さず、であったなら憐れというほかない。
「あの御方はなにもなさらなかったのです。良きことも悪しきことも。
それでも、左大臣殿の物言いもありながら、姫様をお迎えする勅命は下されました」
今は重圧から解放されて、心安らかでいられるのかしら。
清涼殿のほうに目を向けて思う。
皇子たちからの戦地からの要請に、「左様にはからうがよい」と諾々と応じているという。
中央の全面支援は不可欠。帝の処し方はありがたいことだ。
厳しい寒さがつづくある日、常寧殿に南天の枝が差し入れられた。
つやつやした赤い実と、緑の葉があざやかな色をみせる。
「南天は、難(なん)を転じるにも通じまして、縁起がようございます」
かづらが喜んで活けている。
小鳥はさっそく思いつく。
「姫様、何をなさっておいでなのです」
濡れ縁まで出て、高欄につもった雪を、きゅっきゅと手で集めはじめた小鳥に、女房たちが驚いて問う。
至りついた境地が、なにも望まず、なにも言わず、なにも為さず、であったなら憐れというほかない。
「あの御方はなにもなさらなかったのです。良きことも悪しきことも。
それでも、左大臣殿の物言いもありながら、姫様をお迎えする勅命は下されました」
今は重圧から解放されて、心安らかでいられるのかしら。
清涼殿のほうに目を向けて思う。
皇子たちからの戦地からの要請に、「左様にはからうがよい」と諾々と応じているという。
中央の全面支援は不可欠。帝の処し方はありがたいことだ。
厳しい寒さがつづくある日、常寧殿に南天の枝が差し入れられた。
つやつやした赤い実と、緑の葉があざやかな色をみせる。
「南天は、難(なん)を転じるにも通じまして、縁起がようございます」
かづらが喜んで活けている。
小鳥はさっそく思いつく。
「姫様、何をなさっておいでなのです」
濡れ縁まで出て、高欄につもった雪を、きゅっきゅと手で集めはじめた小鳥に、女房たちが驚いて問う。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)