籠のなかの小鳥は

今年はすべての催しが見送りとなった。
各々の殿舍で、気持ちばかり新年の祝いがあるばかり。

小鳥も常寧殿にあって、雪化粧をまとう庭園の松などを眺めながら、少しばかりの屠蘇とつきたての餅を口にした。

たとえ新年の儀が催されたところで、舞や楽を楽しむ気持ちにはなれない。


形骸と化した帝がぽつねんと座す清涼殿は、人の出入りも少なく寂としているという。


「あの御方には、むしろそのほうが好もしいのではないでしょうか。
顔色をうかがわねばならない左大臣殿も戦地におられますし。
とかく、お心が細くてあられますから」
とはかづらの言だ。



思えば複雑な立場におかれたひとだ。

帝の第一皇子にして、番をもって誕生した。
それが故に、否も応もなく帝位に即いた。

次第に気鬱にさいなまれてゆく、父上皇。
干渉を深めてくる后の父、左大臣。
日嗣の皇子として、周囲の期待と注目を集める異母弟や従兄弟。