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明けて、新年———
常であれば、清涼殿でさまざまな新年の儀が華やかに執り行われる。
后妃や内親王など、後宮の女たちも御簾ごしにそれらを眺めて楽しむという。
昨年の弓の腕を競う射礼(じゃらい)の儀では、蘇芳が腕自慢の舎人や武官たちに混じって参加。
みごと第一等であったとのこと。
蘇芳の腕を疑うわけではないけれど。
「宮様がお相手だと、他の射手の方々は遠慮されたりしないのかしら」
めっそうもございません、とかづらはきっぱりと否定した。
「帝の御前にての、天帝に捧げる神聖なる儀。間違っても、手を抜くなどということは許されませぬ」
「まあ、それでは武官の方は形無しですわね」
本分である武芸で、親王に遅れをとってしまうとは。
「弓の腕であれば、比肩するものはおりましょうが。
練習とちがい、衆目のもとの晴れ舞台でございます。恃む(たのむ)ものは、己のみ。
赤の宮様のお心の靭さが、勝利を引き寄せたのでございましょう」
勝利は我が手でつかむ。傲然と言い放った太陽のひと。
今はその光を慕わしく想い求めるばかりだ。
明けて、新年———
常であれば、清涼殿でさまざまな新年の儀が華やかに執り行われる。
后妃や内親王など、後宮の女たちも御簾ごしにそれらを眺めて楽しむという。
昨年の弓の腕を競う射礼(じゃらい)の儀では、蘇芳が腕自慢の舎人や武官たちに混じって参加。
みごと第一等であったとのこと。
蘇芳の腕を疑うわけではないけれど。
「宮様がお相手だと、他の射手の方々は遠慮されたりしないのかしら」
めっそうもございません、とかづらはきっぱりと否定した。
「帝の御前にての、天帝に捧げる神聖なる儀。間違っても、手を抜くなどということは許されませぬ」
「まあ、それでは武官の方は形無しですわね」
本分である武芸で、親王に遅れをとってしまうとは。
「弓の腕であれば、比肩するものはおりましょうが。
練習とちがい、衆目のもとの晴れ舞台でございます。恃む(たのむ)ものは、己のみ。
赤の宮様のお心の靭さが、勝利を引き寄せたのでございましょう」
勝利は我が手でつかむ。傲然と言い放った太陽のひと。
今はその光を慕わしく想い求めるばかりだ。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)