籠のなかの小鳥は

玄武と白虎も飛行能力を有してはいるものの。
頑健な身体をもつ玄武は重さゆえに小回りが利かない。
白虎も迅さも、空中では地を駆けるようにとはゆかない。


正面から朱雀と青龍にぶつかっても勝ち目がないと悟った諸碍の部隊は、二人を避けて空中からの奇襲攻撃を仕掛けてくるという。

総大将でもある二人は、そうそういつも出撃するわけにはいかない。

蘇芳はさぞ悔しがっていることだろうと、そんな話を耳にはさんでは思う。

砦はいまだ敵に占拠されたまま。戦は先の読めない長期戦の様相を呈してきた。


内裏の後宮というぬくぬくと護られた場所にいてさえも、冬の寒さからは逃れられない。
まして戦地の冬はどんなに厳しかろうと、小鳥は指先をこすりあわせる。


古(いにしえ)の人たちが月を見て涙した気持ちが、今なら分かる。

愛しいひとも、同じ月を見ているからだ。
そう思えばこそ、こんなにも哀しい。


あの方も、この月を見ているのかしら———こぼれる涙を袖でおさえる。


誰かを想うことは、すべてにそのひとを見てしまうことなのだと知る。
空の色にも流れる雲にも、彼のひとがいる。