蘇芳の武才も、珀斗の博識も、昴の算術も、青波の読心術も、ぞんぶんに発揮されているようだ。
「聞きまして、青の宮様のこと」
「まあどのような?」
「敵の間諜(スパイ)が潜りこんでいるのに気づいても、あえて泳がせて偽の情報をつかませるのだとか」
「なんとそこまで」
「戦は知略の競い合いでもあるのですね」
「白の宮様は、敵を知り己を知れば百戦殆うからず、と常々口にされているとのことですわ」
「そういえば、わたしが聞いた話では・・・」
深刻さは比べ物にならないけれど、W杯になるとサッカーの話題一辺倒になっていた教室を思い出して、ふっと懐かしくなる。
夜には、夜露を抱いた草のなかで、秋の虫が奏でる天然の楽に耳をかたむけながら、女たちの手仕事は続いた。
手を動かし、ときにおしゃべりに興じながら、秋が過ぎ去り冬の足音が聞こえてくるようになる。
空の高みを飛んでゆく渡り鳥の群れを、女房たちと肩をよせ合い見送った。
内裏の庭園には常緑樹の松や橘が配され、目が寂しくならない工夫がされているけれど。
冬の厳しさがやわらぐわけではない。
「聞きまして、青の宮様のこと」
「まあどのような?」
「敵の間諜(スパイ)が潜りこんでいるのに気づいても、あえて泳がせて偽の情報をつかませるのだとか」
「なんとそこまで」
「戦は知略の競い合いでもあるのですね」
「白の宮様は、敵を知り己を知れば百戦殆うからず、と常々口にされているとのことですわ」
「そういえば、わたしが聞いた話では・・・」
深刻さは比べ物にならないけれど、W杯になるとサッカーの話題一辺倒になっていた教室を思い出して、ふっと懐かしくなる。
夜には、夜露を抱いた草のなかで、秋の虫が奏でる天然の楽に耳をかたむけながら、女たちの手仕事は続いた。
手を動かし、ときにおしゃべりに興じながら、秋が過ぎ去り冬の足音が聞こえてくるようになる。
空の高みを飛んでゆく渡り鳥の群れを、女房たちと肩をよせ合い見送った。
内裏の庭園には常緑樹の松や橘が配され、目が寂しくならない工夫がされているけれど。
冬の厳しさがやわらぐわけではない。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)