籠のなかの小鳥は

今は “非常事態” だ。

そして、誰も思うことは同じ。
戦地にいる大切な人のために、少しでも役に立ちたい一心でいる。

そこに、女官も皇女もない。


常寧殿での包帯作りの話は、口づてで後宮に広がる。
他の殿舍も倣って、包帯作りや戦地へ送る衣類の仕立てなどに精を出すようになった。


小鳥はさらに、新たに装束を仕立てるにあたって、自分に回す布地を少しでも減らしてもらうことににした。

すべて長袴ではなく切袴で仕立て、あとは小袖と表着が数枚あればじゅうぶんだ。
だいたい何枚も単衣や袿を重ねていると、作業もしづらい。


気づけば、女房たちも似たような装束をまとうようになり、この出で立ちは “姫小袖” と呼ばれて、流行をみせている。


濃く色づいた庭園の木々の葉が、はらりはらりと落ちてゆく様子を、小鳥は悲しい想いで見つめた。

まるで命がひとつ、またひとつと散ってゆくように思えてならない。


戦地からの報せには、しだいに重く苦しいものも含まれるようになってきた。