籠のなかの小鳥は

戦場の天使には遠く及ばないけれど、ようやく思いついたことがあった。


宮中の着料のことを扱う、御匣殿(みくしげどの)に掛け合い、染めていない白い絹を倉にあるだけ出してもらうことにした。

それらを細く裁って巻き、包帯にする。

絹には抗菌作用があるから、肌にとてもいいのだと祖母が言っていたのを思い出したのだ。

かづらや残った女房たちと、来る日も来る日も包帯作りに精を出した。


鋏で生地にちょんと切れ目を入れて、布目にそって一気に裂く。
ピィーッ、と高く鋭い音がする。

じきに、ほつれることなくきれいに裂けるようになった。
巻いて筒にするのも手早くなる。

それにしても、長い時間触っていても手荒れしないところは、さすが最上級の絹だ。

ある程度数がまとまったら、戦地に送ってもらう。

こうして手を動かしているあいだは、余計なことを考えずにすむのがありがたかった。

本来であれば、こんな手仕事は姫様のやることとは外れているのだろうけど。

誰も、日嗣の皇女ともあろう方が、などとは言い出さない。