常寧殿に残された小鳥は、どうあっても浮かぶことのない心を抱えていた。

もちろんそれは、小鳥だけではない。

国を挙げての戦。
女たちの多くが、兄弟や夫、あるいは恋しい相手を戦地へ送っていた。


落とされた砦を奪還し、夷狄の軍を大和の地から撤退させる。
それがそう簡単に運ばないであろうことは、軍事にうとい身でも分かる。

難攻不落。だからこその砦だ。
すでに敵は自国の側からの補給路も確保しているという。


長期戦になるやもしれない。女房たちがすすり泣きながら、そう漏らすのを耳にした。

電気のない世界を、これほど呪ったことはない。

メールなら送信ボタンを押すだけでできるやりとりが、電話ならばダイヤルするだけで通じるやりとりが。

西国の国境から都までは、早馬で昼夜をわかたず駆けても、四日はかかる。

馬も兵も貴重であり、そう頻繁に行き来させるわけにもいかない。