「これを身につけていれば、鎧よりも心強いとは、不思議なものだな」


ぐにゃりと目に映る世界が赤く熱くにじむ。

作法も忘れて立ち上がると、愛しい人の胸に飛びこんだ。

「・・・お願い、お願いです。どうか無事に帰ってきて」

言葉遣いも忘れた。ただしがみついて、あふれる涙が彼の狩衣を濡らす。


「———必ず、」小鳥の体をしっかりと抱いて、蘇芳は応えた。

「必ず戻る。お前をまたこの腕に抱くために」





———早朝、紫野の地に大和軍数万人が集結し、出陣。

後宮にあっては、見送ることも叶わない。
朝日にひるがえる、白地に赤を染めぬいた大和の旗が、それはそれは美しかったと。

目にしたものの伝だ。