籠のなかの小鳥は

ところで、と青波がこちらに目をむける。
「姫君はだいじょうぶ? 顔色がすぐれないけど」


「ぁ・・・いえ」

言われて初めて、呼吸が苦しいことに気づく。
ずっと息をつめていたせいだろう。意識して深い呼吸をくりかえす。


すまん、という蘇芳のつぶやきが耳に届く。
「惨いものを見せたな」

彼の手がゆっくりと背中を上下する。

そんな二人の様子を、青波が機微をふくんだ表情で横目にながめる。


違う、違うのだ。非情な戦いを目の当たりにしたのは、たしかにショックだけれど。
それだけじゃない。

一国の命運を背負い、その覚悟も度量も十二分にもつ皇子たち。

なのに自分は————


宮中で花や絹にうずもれているだけの姫様にはなりたくない、なんて思っていた自分はどれほど身の程知らずだったのか。

番を持つ? 枢は縮みあがってうちに籠ったきりだ。なんという意気地のなさ。それはそのまま自分の姿だ。


うつむいて固くくちびるを結ぶ小鳥を抱き寄せて、蘇芳は飛行の速度をはやめた。