籠のなかの小鳥は

相手の技量を推し量る余裕まである。

朱雀が首をひねり、視線をひとりに定める。攻撃や撤退の指示をした男。

「首領格を追う。できれば生け捕りにしたいんだがな」


その男も手傷を負っている。足に深々と刺さった朱雀の羽を引き抜かずにいるのは、出血を抑えるためか。

朱雀が背後から数度、焰を浴びせる。

すんでのところでかわしながら、相手も死にものぐるいで飛んでいる。

追う朱雀が、不意に羽を勢いよくひるがえした。弾きとばされた矢が大きく弧を描いて落ちてゆく。


背後から諸碍が二人、こちらに迫っている。違う方向に逃げていたはずの者たちだ。


「ほう、頭のために命を張るか。ますますもって気に入った」


一人は朱雀の焰に撃たれて、片腕のひじから先がもげている。
もう一人の腹部からは、鮮血が流れている。

二人の目には覚悟の色があった。

首領はふり返ることなく、いっさんに西の方角へと飛んでゆく。


ああ、逃がしてしまう・・・