籠のなかの小鳥は

朱雀が翼を旋回させる。
疾風!

射られた矢も、飛ばされた針も、その空気流にはじかれる。

朱雀がお返しとばかりに、自身の風切羽を四方八方に放つ。

刃と化した朱い羽が諸碍を襲う。肌を裂いて鮮血をほとばしらせ、あるいは体に深く突き刺さる。


「ギェッ、ギェッ、ギェッ!」
聞き慣れない、耳障りな悲鳴が響く。

もはや無傷でいる者はひとりもいなかった。

とどめとばかりに、焰を放つ朱雀。さらに数人が落とされる。


諸碍たちと同様、まざまざと思い知る。
この空で、朱雀に敵うものなどいないのだと。


残ったうちのひとり、さきほど攻撃の合図をした男が、指笛と手ぶりでなにごとか伝達する。

全員が一斉に背をむけ、違う方向にむかって逃飛をはかる。
指令に即座に反応するよう訓練された動きだ。

分散すれば、一度には追えない。


なあ小鳥、と蘇芳。
「山で獣に襲われたときに助かる方法を知っているか」

なんの話を・・・

「自分より足が遅い相手と逃げること、だとか」

ブラックジョーク。

「だがこいつらは誰もそうしない。なかなか見どころがある」