籠のなかの小鳥は

風圧でまくれあがる御簾をはねのけ、濡れ縁をこえ、高欄を大きく蹴り、そのまま———


一瞬だけ、御簾の外に控えていた弼と目が合った。
あっけにとられた顔をしながらも、目にはあきらめの色があった。


人を地上に縛りつける重力という名の鎖をたやすく引きちぎり、朱雀は二人を乗せて悠々と空に舞い上がる。

邸も見上げる人も、地上のすべてがみるみる小さく遠くなってゆく。


広げられた翼の、なんという輝き。羽ばたくたびに、煌めく朱金の波が眼前にあらわれるようだ。


はるか地上を見下ろす。
こちらを見上げる人々が見える(鳥の属性をもつ小鳥は、遠目が利く)。

夢中でこちらを指さしている子どもがいる。
魂を抜かれたように、ぽかんと見上げる者がいる。
地に伏して、あがめているような者さえいる。


そうだろうと思う。

こんなにも美しく、こんなにも雄大に空を舞うのだもの。

ほぅと息をつきつつ、だんだん興奮がさめてくると、地上のことに心は戻る。

今ごろ邸の者たちも、迎えにきた女房たちも困っていることだろう。