籠のなかの小鳥は

皇女様、と御簾の外から弼の声。
「わたしはこちらに控えておりますので、何なりとお申し付けください」


すすっと、部屋の際まで膝行すると、小鳥は御簾をたくし上げた。

なにか言いかけた形のまま、弼の口が言葉を失う。


「わたしは異界から参りましたので、御簾をへだてる習慣がないのです。よろしければ、じかにお話ししませんか」


戸惑ったようにうつむいたが、すぐに顔を上げた。すでに目は落ち着きを取り戻している。
蘇芳がこの少年を侍童にしている理由が、よく分かる。

わたしのようなものでよろしければ、と控えめに返ってきた。


思いつくまま、弼の身の上をそれとなく聞いてみる。


もともとは蘇芳の乳母の親戚筋のものだという。
とはいえ出自はかなり低く、かろうじて貴族を名乗れる程度。幼いころにふた親を亡くし、遠縁の乳母のつてで、この邸に引き取られた。

雑役の童だったが、蘇芳に引き立てられ彼の侍童として仕えるようになった。
ときに、剣や弓の手ほどきまで受けているという。


「本来ならば、蘇芳様のおそばにも寄れないものを」

言葉には、彼に仕えることへの誇りがあふれている。

蘇芳様、と名で呼ぶことを許している。蘇芳が弼に信頼をおいている証だ。