籠のなかの小鳥は

「まあ、近くに寄れ。久しくお前に触れていない気がするな」


言われて、小鳥は膝行(しっこう)する。膝立ちですりすりと畳を進むのが作法なのである。

繧繝縁(うんげんべり)の畳をしいた帳台のふちまで寄る。


蘇芳がすっと手をのばし、小鳥の頬に触れる。厚く硬い手のひらの感触。日々、剣をにぎり弓を引いている手だ。
眦(まなじり)にたまる涙を、親指の腹でそっとぬぐう。


蘇芳が体をよせ、腕が回される。抱きすくめられた。力強くて懐かしい彼の腕の中。

あぁ・・・・目を閉じる。

ようやく体の芯から、じわじわと温められるように安堵が広がる。


心配は無用だ、とささやく彼の声を、この世でもっとも確かなものとして聞いた。

「俺がこの程度でどうにかなるわけなかろう」
腕を解いて、にんまり笑う。

ぬぐってもらったばかりなのに、また涙があふれそうになる。


ようやく気がついた。
最初のころ感じていた怯えは、もうない。

このひとには、自分の心のまま振る舞い、しゃべることができるということに。


周囲の顔色ばかりうかがっていた自分が・・・