籠のなかの小鳥は

東の空から、にじむように朝日がさしている。

人もまばらな都の路を、牛車はゆっくりと進んでゆく。


どこかに到着したようだ。近衛大将が訪れを告げる声が響き、重い音をたてて門が開かれる。
着いた、と思ったのだが、なおも車は進む。そろそろかな、と思ってもまだ進む。

いつか見た映画に出てきた豪邸を思い出した。門から邸まで、なかなかたどり着かないほど広い。


ようやく、西の廊にお車をお寄せしろ、という男たちの声。車が止まり、牛が轅から外される。
簾が巻き上げられると、牛車と廊のあいだに打ち板がわたしてあった。


姫様、お降りくださいませ、と聞き慣れない女房の声。


はずむ足どりで、打ち板を渡ってきた小鳥に、上臈格とおぼしき女房は口をあんぐり開け、近衛大将は笑いをかみ殺した。


皇女様はまことお健やかな方と聞き及んでおりましたが・・・先導をつとめて渡殿を歩きながら、女房はそんなことをもらす。


小鳥はといえば、渡殿からのぞめる庭園に見とれていた。
これぞ平安絵巻という光景が、眼前に広がっているのだ。

建物も全貌がわからないくらい広大だ。敷地面積はどれだけあるのやら。現代の日本にあったら、間違いなく重要文化財だろう。


内裏ももちろん広いけれど、あそこは大勢の人が住まう町のようなところだ。

一つの家がこんなに大きいなんて、とついきょろきょろしてしまう。