籠のなかの小鳥は

寂れたどこぞの邸の裏角に、一台の網代車が寄せてあった。
白虎が静かに足を止める。

「ぁ・・・」ようやく身体の力が抜ける。


皇女、と呼ぶどこか聞き覚えのある声。お忍びの外出のときも助力を仰いだ、近衛大将だった。
「早くお車へ」

その声に、すばやく牛車の中へ身をすべらせる。
小鳥が乗るのを見届けるや、白虎はきびすを返してその場を去った。去りゆくその姿を目にして、白虎がまだ速度を抑えていたのだと知った。


牛車の中でひとり、単調な振動に身をまかせながら、気持ちはあちらへ振れ、こちらへ揺れる。


何日か留守にしてしまう宮中のこと。
“深窓の姫君” の便利なところは、不在でも気づかれにくいことだ。なにせ人前に姿を見せることがないから。

背格好の似た女房を身代わりにして、帳台で伏せっていることにする、とかづらは言っていたけれど。
もし日嗣の皇女がこっそり宮中を抜け出したと知れたら、やはり問題になるだろう。