籠のなかの小鳥は




「クソッ! あの古狸。臣下の分際で俺に意見しようとは、いい度胸だ」

高欄に縁取られた濡れ縁を大またに歩きながら、蘇芳(すおう)が毒づく。


「しー、蘇芳、聞こえるかもしれませんよ。長伴 逆(さかし)殿は、左大臣にして今帝の外戚。意気軒昂ともなるでしょう」

珀斗がたしなめる。白に銀糸を織り込んだ直衣姿。漆黒の長い髪に、生まれつきこめかみに一房まじる銀髪が映える。


「ふん、俺が帝に即位したあかつきには、そんな権勢は消え失せるのにな」


「お前が即位すると、決まったものでもないだろう」

半歩後ろを歩く、昴(すばる)がつぶやく。あっさりした無紋の黒い直衣をまとっている。しかしその束帯を飾る石帯は、黒くなめした革に、黒曜石が縫いつけられた珍しく貴重な品だ。


「お前には渡さん。帝の座も、あの女もな」
足を止めて向き直り、蘇芳が低く告げる。