籠のなかの小鳥は

「それが叶いますものなら・・・」
小鳥は目をふせる。

容易に男のもとへ通えないことは、昴の件で学習済みだ。


なまじ宮中でなければ、あるいは・・・ひとり言のように珀斗がつぶやく。

「え・・?」


いえ、こちらのことでございます、と檜扇で口元をおおう。
「そういえば皇女、あちらは———?」珀斗がすいと視線を横にすべらせる。

その先には、文机とその上にちょんちょんと乗せられた、数羽の折り鶴。
赤い千代紙で、手なぐさみに折ったものだ。


「紙で作った鳥、でございますか」


「はい、折り鶴といって、元いた国では願いごとをこめて折る習わしがありました」

大和国では、千代紙は女童の雛遊びに使うのが一般的だ。意外や折り紙の文化は普及していない。


本来ならば、千羽折るものなのですけれど、と言い添える。


千羽、と珀斗が目を見張る。

「心が足らず、こればかりですが・・・」