籠のなかの小鳥は

夜、帳台の内で日課の体操をしようとして、はたと気づく。

蘇芳の訪いがないなら、こんなことをして、なんの意味があるんだろう。
体力維持に努めたりして・・・・


腕立て伏せをしようとした姿勢のまま、力なくくずおれ枕に顔をうずめる。


おい小鳥、という蘇芳の声が耳によみがえる。
この世界でただ一人、自分の名を呼ぶひと。


坪庭に黄色い待宵草が咲いたと喜んでいたら、「赤い花を植えろ」と言い出す蘇芳。

そんなわがままさえも、今は懐かしい。
抱き寄せられる腕の感触を思い出す。

彼の訪れがない日々がくるなど、想像もしていなかった。
あの蘇芳が病を得て弱っているなんて、信じられない。いや、信じたくない。


赤の宮様・・・つぶやきとともに涙がこぼれ落ち、枕にちいさなしみをつくった。