訪いを増やしたところで、女性の気持ちが向くというものではないのに。
色事の道ならば、自分のほうが歩き慣れている。
———また新しい女性のもとへ?
いつだかの珀斗の声が、耳をよぎる。
———僕はこの道の狩人なものでね。
———わたしには、迷い子に見えますがねえ。
檜扇を口元に押しあてて、静かに言う。
———僕が迷い子なら、あなたはなんだろう?
———さしずめ囚人(めしうど)といったところですかね。想う人には、夢か幻か想い出の中でしか会えませんから。
———難儀な道だな。
———お互いに・・・
「——様、青の宮様・・」
少女がわずかに身じろぐ。
「あの、あまりくっついていると、その・・」
気にしないで、と平然と返してやる。
字は千々に乱れて、紙の上でのたくっている。
顔を赤らめて震える手で、それでも懸命に筆を握っている。
色事の道ならば、自分のほうが歩き慣れている。
———また新しい女性のもとへ?
いつだかの珀斗の声が、耳をよぎる。
———僕はこの道の狩人なものでね。
———わたしには、迷い子に見えますがねえ。
檜扇を口元に押しあてて、静かに言う。
———僕が迷い子なら、あなたはなんだろう?
———さしずめ囚人(めしうど)といったところですかね。想う人には、夢か幻か想い出の中でしか会えませんから。
———難儀な道だな。
———お互いに・・・
「——様、青の宮様・・」
少女がわずかに身じろぐ。
「あの、あまりくっついていると、その・・」
気にしないで、と平然と返してやる。
字は千々に乱れて、紙の上でのたくっている。
顔を赤らめて震える手で、それでも懸命に筆を握っている。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)