籠のなかの小鳥は

「書いてごらんよ、見ていてあげるから」

恐れ多い、としぶりながら小鳥が筆をとる。

持ち方がよくない。なんだろう、その寝かせたような握り方は。


「もっとこうして」と後ろから手を添えてやる。


「あっ・・・」

びくんと、とたんに身体がこわばるのが分かる。

「力を抜いて」わざと耳に口をよせてささやく。

顔をうつむかせ、髪のあいだからのぞく耳朶がみるみる桃色に染まってゆく。吸い付きたくなるような、恥じらいの色だ。


男と女のことを知らぬわけではない。だからこその緊張。戸惑いと怯えが、じかに伝わってくる。

こうして男を御簾の内に入れるくせに、なんの経験もないのだなと、青波には手にとるように知れる。


こんな初心な少女が、蘇芳と立ち回りを演じ、ときに珀斗も目を見張るほどの知への好奇心をみせる。あの堅物の昴でさえ、引きつけているようだ。


当の本人は、誰に心を傾けているという風でもない。けれど今回の落雷事件では、昴のことをひどく案じている。それが面白くない蘇芳が、常寧殿にひんぱんに顔を出しているという。