籠のなかの小鳥は

「どれ、僕もちょっと書いてみようかな」


「そんな、能筆家で知られる青の宮様が。すずりも墨も紙も、ちゃんとしたものでないので・・・」
小鳥があわてて、顔の前で両の手をふる。


「書きたくなったんだもの」
すずりに水を足して、墨をする。その手元を、熱をおびたまなざしで見つめてくる。

まっさらな紙に思いつくまま、さらりと書きつける。


『曖々と深き川面に漂いて 
       浮かぶ瀬にこそ 色を添えなん

(※わけもわからないまま流されている、そんな中でも、わたしはあなたの傍にいます)』


凡歌だ。珀斗なら、檜扇で口元でもおおって「あまり上手いお歌とはいえませんねぇ」とでも評すだろう。

小鳥は紙を手に、しげしげと眺めている。意味など分かるまい。ただ手蹟の見事さに見とれているだけだ。

曖々(あいあい)と色の藍をかけて、自分を意味しているなどと、説明してやるつもりはない。
なにせ優しい男ではないから。