籠のなかの小鳥は

ようやく実家に下がった彼女は、男御子を生み落とした。

第九皇子、のちに黒の宮様と呼びならわされることになる、昴の誕生である。

番をもつ皇子の誕生に、国をあげての祝賀のなか、姫はひとり虚ろな心を抱えていた。
宮中からは、参内を求める勅使がひんぱんによこされたが、二度と戻ることはなかった。


まだ十代の姫は、その美しい黒髪を自らの手で切り落とし、世を捨てた。女の身で自らの意志をつらぬくには、そうするより他なかった。


———自分は母に疎まれているのだろうか。

そう問うた幼い昴に、乳母が涙ながらに語った昔話だ。


俗世を捨てた母との仲は、隔てられたままだ。昴の私邸の敷地内に建てられた庵に、ひっそりと住まっている。


小手毬の花を見ると、だから、母を思い出す。