籠のなかの小鳥は

白い漉紙にさらさらと筆を走らせる。

墨が乾くのを待つあいだに、視線を横にむけると棚の花器にいけられた花が目に入った。

庭師に託されて、侍従が私邸から届けてきたものだ。小手毬の花。
卯月に咲く花だが、皐月も末の今時分に遅れて開いた一株だという。

白い可憐な花房が、黒釉の花器に映えている。


小手毬を見ると、母を思い出す。

小手毬の姫と、母がそう呼ばれていた頃があった。母が、幸せだった頃のことだ。



昴の母は、桃園卿の宮の娘として生まれた。桃園卿の宮は、雲居という番をもち内大臣の地位にあった有力者だ。


その娘として生まれた昴の母だが、ものごころつく前に生母を亡くしてしまう。
そのため、内裏の後宮にあずけられて養育された。

後宮には、幼い皇子や皇女たちがいる。そのため、遊び相手として殿上童とよばれる子どもたちもともに住まっているのだ。