籠のなかの小鳥は

「黒の宮様、姫様におかれましては大変なお気弱りで。
どうかこのままおそばで、お身護り願えませんでしょうか」


かづらの声が、心なしかはずんでいる気がする。
日頃、健勝すぎる小鳥に気をもんでいるかづらは、ここぞとばかりにか弱い姫様をアピールする。


そのつもりだ、昴の声が耳にふれる。

かづらはいそいそと几帳の陰にさがり、昴と二人残される。

隣に昴がいる。息づかいまで感じられるほど近い。

気恥ずかしさに顔をうつむけると、黒い直衣に光る白珠が目にとまった。
水滴、濡れている。雨粒が・・・

はっとして顔をあげると、昴の髪が乱れ、前髪がひたいにはり付いているのに気づく。雨と風にさらされたのだろう。



後宮の各殿舎は、渡殿(わたどの)とよばれる渡り廊下でつながっている。
この渡殿、屋根のついた橋のようなもので、手すりはあるけれど壁はない。

吹きっさらしなので、透渡殿(すきわたどの)ともいう。