籠のなかの小鳥は

父は帝位をのぞんではいなかったようです。珀斗がしずかに言い添える。



「絶影に比べれば、我が父の番など、耳ばかり大きい兎のような姿だぞ。
聞き耳ばかりたてて、誰も信じられなくなり気鬱になってしまったわ」
箸をかんで、軽く首をふる。


「上皇のお気持ちも、分からないではありませんが。
宮中など、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跳梁跋扈する伏魔殿。聞かないほうがよいことばかりでしょう」


それは違うぞ、と蘇芳。
「番はつまるところ、その者の本質、器をあらわす。
我が父の疑り深く小心な心根が、垂れるほどの耳をした小動物の姿をとったに過ぎん」

なまじ番などもたぬほうが幸せだったものを、蘇芳の言葉に珀斗は目をふせる。


「だから俺は、お前が人のいうような、たおやかな宮様とは思わん。
研がれた牙と爪をもち、どこまでも勇猛になれる男だ」


「おや、わたしはいつでもそのつもりですがねぇ」

珀斗が箸で小さく切り分けた菜を品よく口にはこぶ。