「ええぃ、クソっ! あの肉饅頭」

「蘇芳、いくら自邸とはいえ、左大臣殿をそのように・・・」


「やかましい、お前もいら立っているだろう。何かといえば北の国の飢饉を持ち出して、西国への出兵に頑に異を唱える。
あいつの腹の内は分かっている。出兵のために割く租税や員数が惜しいだけだ。
それでいて、国益の維持だなんだ並べて西国からも北国からも、取り立てる年料舂米は一粒も減らさんときている。

あいつは民がどれだけ疲弊しようが、芥ほども気にかけておらん」


「出すものは増やさず、入るものは減らさず、ということなのでしょうねえ」

珀斗がため息をつく。


蘇芳は腹立ちまぎれに、がつがつと椀の強飯(こわいい)をかきこむ。