前肢をそろえ、珀斗の隣に座す白虎には厳かな風格が感じられた。


ここであなたにお会いできてよかった、と珀斗は哀しみを秘めた瞳で告げた。

「そろそろ戻りましょうか。女房たちが心配するでしょう」

風が吹き、白虎の長い毛をそよがせた。


砂利の敷きつめられた道を、二人並んで歩く。
おそらくは、それぞれ別の人のことを想いながら。

祖母に伝えることができたら、と小鳥は思う。
自分が今、ここにいることを。

幸せかどうか問われれば、答えに詰まる。ただもう、枢を、自分の番を隠さなくてもいいのだと。


両側から枝をのばした楓の葉が、頭上をおおっている。

日射しが葉でさえぎられて、その下を歩く珀斗の白い直衣を青く映し、端正な横顔に翳りを落とす。