それでも、翔くんの態度にじわっと目に涙が浮かんできて、それを拭おうとしたとき。




「…泣かないでよ」




本当に小さな声。


風の音にかき消されるほど小さな声が聞こえた。


その声はさっきの冷たい声でもなくていつもの優しくてだいすきな声。



今しかないって思って、俯いていた顔をパッとあげて翔くんを見て名前を呼ぶ。




「しょ…あ、芳川くん!」




教室から出ようとしていた翔くんの手をぎゅっと握った。




「…私の…話を聞いてください」




これで最後にするから。


もう、翔くんのこと忘れるから。


だから最後に、私の話を聞いてください。



そして───私のことをきっぱり振ってください。