「あの、ありがとうございました」
「いや、オレも楽しかったから。携帯も預かってもらってたしね」

あっ・・・せや!
そのセリフで本来の目的を思い出した。

カバンの中からケンジさんの携帯を取り出す。
「携帯、お返しします」
「ありがとう」
「それからこれ・・・」
そう言いながら
色気のない銀行の袋をケンジさんに差し出す。

「こないだはホンマすいませんでした。お代、もらったらアカンのに・・・」
中身はこないだ、ケンジさんが置いて行った千円札。
「そんなの、気にしなくていいのに」
「いえっ!クリーニング代にもならんとは思いますけど・・・」
私が申し訳なさそうにすると
ケンジさんはクスッと笑って
「ありがとう」
受け取ってくれた。

ほな、用事も済んだし、これで解散やな。

と思ったけど
・・・・・・
なんや?
この
なんかちょっと
残念な気持ち・・・。

そんな気持ちになってたら

「これから予定ある?」

ケンジさんに聞かれた。

「6時からバイトですけど・・・」

ケンジさんが腕時計を見る。
今は・・・2時半過ぎってとこかな?

「じゃあ、お茶でもしようよ」

私が渡した銀行の袋をピラッと見せながら
ケンジさんがそう微笑んだ。