「もう、わたしが言わなくてもわかっているじゃないの」

わたしがそう言ったとたん、
「また?」

梨代ちゃんは呆れた顔を見せた。

「ねえ、学校の先生の口説き方を教えてよー」

「教えるも何も、あたしは口説かれた側だったわよ。

口説いてきたのはあっち、先生の方だからね!?」

もう話したくないと言うように、梨代ちゃんは息を吐くと額に手を当てた。

「と言うか、何でそんなことをあたしに聞くのかな?」

「だって、梨代ちゃんの旦那さんは先生じゃない」

そう、梨代ちゃんの旦那さんは彼女が通っていた女子校の先生である。

名前は山吹勇吾(ヤマブキユウゴ)さん、33歳。

担当は先生と同じ数学だ。