だから


迷う権利も

翔太さんの気持ちを引き止める権利も私にはない…。



彼を


ちゃんと解放してあげなきゃいけない…。



「翔太さん、会うのはもうこれで終わりにしよ…?」

「えっ…?」

目を見開いた翔太さんが

震える声で聞いてきた。

「なんで…?」


「んー…やっと結婚とかそういうのから解放されたから…

自由でいたい…かな?

颯太と2人のほうが気楽だし

翔太さんがうちに来すぎて、颯太が勘違いしても困るから。」


泣いたら…だめ。


こういう時こそ


結婚生活で習得した冷たい眼差し‼


「迷惑ってこと…?」

今にも泣き出しそうな翔太さんを

見るのが辛い。


でも、翔太さんの辛さは



この瞬間だけ。


きっとすぐに良い人が現れる。



だから


ちゃんと幸せになってよ。



泣かないから。


涙なんか見せないから。


涙を見せないことが


私から翔太さんにあげれる


精一杯の

愛情表現だから…。




「うん。迷惑かな」


無神経なほど、笑って見せた私に


翔太さんは小さな声で「分かった」そう呟いた。






彼がいなくなるまで


笑顔を崩さないで。


さよならなんかは言わなかった。


言えなかった。



そんか私のわがままを


最低な女だと思って


忘れて欲しい。




愛してる。


愛してるから…


幸せに

なって。





******************




静かに扉の閉まる音がして


翔太さんのいなくなっこの部屋は

灯りを失ったかのように薄暗くなる。





扉に耳をあてて


遠のいてく足音を

確かめて…


ようやく


堪えてた涙が


落ちて行く。



音も立てずに


彼に聞こえないようにと…



静かに落ちて行く。




「翔太さんが…





好き。」