愛してるなんて言わないで


「結花、そういやお前も独身だよなっ⁉」

「えっ…?一応は…そうなりますね?」


「そっか、そうだよな!俺、お前と付き合ってやるよ」


「はっ⁈

寝言は寝てる間に言って下さいよ…」

「大丈夫!気にすんなって、俺も結花がバツイチなんて気にしないからっ‼」


その言葉に

一瞬カッと頭に血が昇った。


いくら酔っ払っているとはいえ…


こんな場所でそんな事を言うのは失礼にも程がある。


言い返そうとした時

「そういえば結花ちゃんて、シングルだけど、どうしてー?」


やり取りを聞いていた、同年代の独身の先輩方が寄ってきた。



それを聞いてどうすると言うのだろうか…。


何も答えない私に

「やましいことでもしたのー?」とくすくす笑う声。


シングルというだけで…

バツイチというだけで

どうしてこんな屈辱をうけなきゃいけない?


場の雰囲気が悪くなったのを


遠くにいた社長達にも伝わったのだろうか…?


「何かあったのか…?」

翔太さんの声が近づいて来る。


何も答えない私に独身先輩方が追い打ちをかけた。


「先輩の質問にも答えられないわけ?

これだから、呑気に専業やってた女は常識知らずね」



30過ぎて

結婚相手も見つけられない独身女に…


なにが分かる?


「何の話しをしてる…?」

翔太さんの声色が変わったのと同時に

私は沢渡先輩の手を解いて帰り支度をはじめた。