「赤坂君、左手で書きなよ?」
「だって、お前、すぐ謝るし…」
「ごめんね…もう謝らないから」
それから、少しずつ会話をするようになった。
ほんの少しずつだけど…
私達の間に言葉のやりとりが生まれた。
肘がぶつかるのも
謝らない代わりに視線が合ってはくすくす笑うようになって
そういう優しい時間の中で
気づけば私は、赤坂玲二君に会える学校が大好きになっていた。
「最近、疲れた顔してるけど、大丈夫か?」
「えっ?あ…うん。
バイト初めて。
覚える事があって頭んなかパンパン。」
「バイト?すげぇな?」
成績もスポーツも優秀な赤坂君と比べたら…
私のしていることなんかこれっぽっちも
「凄くないよ。」
「どこでバイトはじめたの?」
「駅前のファミレスだよ」
「今度、行ってもいい?」
「えっ⁈」
ドキッとした。
玲二君が私のバイト先に来てもいい?なんて…。
嬉しいような
恥ずかしいような…
胸をくすぐる気持ち。
それが恋だと知った頃に
席替えで私達は離れて
学校で会話をすることもなくなった。
話しかけて見たくても…。
赤坂君の周りには私と比較してはならないような可愛い女子がいつもいる。
赤坂君と話しがしたくても…
こんな自分が…って思ったら
声をかける勇気もなかった。