お皿を洗い終わって振り返ると、水嶋さんは「シャワーでも浴びよっかな」と言いながら、左手でシャツのボタンを外していた。

「脱げない……」

右腕を曲げたままだから、ボタンは外せても、そこからが一人ではできないらしい。
ああだこうだと言いながら、なんとかシャツを脱がせると、普段は目にすることのない男の人の素肌が目に入り、急に恥ずかしくなってしまう。

裸の胸板から目を反らしながら、水濡れ防止のためにギプスにビニール袋を被せて輪ゴムでとめる。

「……シャワーどうぞ。あとは一人でできまよね?」

私が言うと、水嶋さんは「できなかったら呼ぶ」と言って、にやりと笑った。

水嶋さんがバスルームに消えると、ソファーにぐったりと座り込んだ。
あんまりものが置いていない、おしゃれだけど殺風景な広いリビング。
ここは私のアパートより会社にも近くて快適かもしれないけど。
やっぱり自分の部屋じゃないから落ち着かない。

「おーさわー」

しばらくすると、バスルームから水嶋さんの声が聞こえてくる。

「なんですかー?」

ドアの前から私が返事を返すと、中からドアがガラッと開き、裸の水嶋さんが髪から水をボタボタたらしながら立っていた。

「うわぁ!」

思わず背中をむけると、水嶋さんは「パンツ履いてまーす」と笑いながら言う。

「なんですか、どうしたんですか?」

「服が着れなくて」

「あぁ……そうですね」

そろそろと振り返ると、確かに下はハーフパンツを履いていた。

「その前に髪がびしょびしょですよ」

水嶋さんは「ギプスに気をとられて拭くの忘れてた」と笑いながら、バスタオルで髪を拭く。

「ちゃんと洗えましたか?」

バスタオルの端っこで濡れた背中を拭きながら聞くと、「洗えなかったら洗ってくれるのかよ」と返された。

「そ、それは……無理ですよ」

「ばーか、当たり前だ」

水嶋さんは私にパーカーを放り投げて、「これ着させて」と笑った。

水嶋さんの後でシャワーを浴びながら、こんな毎日が、あと一ヶ月も続くなんて……とぼやく。
一日も早く家に帰りたい。