「武瑠……何か思い当たる節は、ない?」
顔を青くした祐哉が俺に聞いてくる
「…………わからねぇ。 思い出そうとすると頭が痛くなる」
まるでその痛みは思い出すな、と警鐘を鳴らしてくれるようだった
「俺は、全部って訳じゃないけど……たった一つの"何か"忘れてはいけない事があったと思うんだよね」
「何か……?」
「それが、思い出せないんだ……」
祐哉はそう言って震えを押さえようと自分の身体を抱き締めた
「武瑠、このままってワケにはいかないだろ!? "雷光ヲ恨ミシ者"はいつか俺達の前に現れる!! そうなったら終わりだろうっ!!!」
亮太は顔面蒼白の状態で俺に掴みかかる
亮太が言いたいのは今後の俺達の保身
俺達の下っ端時代を知れば皆が離れていくのは確実だ
それをどうにかしなければならない
なのに、何なんだ?
──この胸騒ぎは……
……この時、誰一人気づかなかった
何者かが脅かそうとする影に
俺達が既に忘れてしまっていた事が関係している事に
誰も気付く事はなかった
side end.