あの女と天音と言う男の姿が見えなくなってもオレは立ちすくんだかのように動けなかった


鼓動が頭の中で早鐘のように動いている


「……ハッ」


数秒の間に息が止まっていた


息をするのを一瞬でも忘れていた


『それなら聞けばいいのです』


あの女の言葉が今でも残っている


『ご存知ないですか。 彼らが下っ端時代に何をしていたのか、先代方がどの様な方達だったのか聞いていないですか?』


……うるさい


『まさか知らないとは言わないですよね』


うるさい、うるさい


『錬さんは幹部なんですよ、知ってないとおかしいんじゃないですか?』


うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい


ガンッ!!


「──っ゛!」


右手に感じた痛みで我に返る


無意識に壁を殴ったのか皮が捲れそこから血が流れていた