──上空に浮かぶ月が雲に隠れ辺りが暗くなる
元々街灯も家の明かりもない場所で五感の昨日が鈍くなる
……それは"掃除屋"と通称されるオレらには全く無関係
だが、目の前で震える男には関係しているようだった
「だっ…だずげで…ぐれ………家族がい…命、だけは……」
誰に言っているかもわからないうわ言を延べ、命乞いをする男
「ハッ、家族だぁ? その家族を売ったお金で遊び回っていたのはお前だろ。 お陰で払えなくなったモンなぁ」
「……ヒッ、ヒィイイッ」
雲に隠れた月はまだ出ていない
顔もわからない奴にいきなり斬りかかれたら恐怖が多いだろう
………その前に名前を呼んで確認はしたがな
最初は調子こいて随分と上から物を言われたが立場が変わって今じゃ虫けら以下だ
ハァッ、と溜め息をついて俺は持っていた刀を男の首に当て、問答無用で後ろに引き抜く
男は兎に角、自分よがりで最後まで雑言を吐いたまま汚いモノを撒き散らし動かなくなった