ドゴッ


風が切った瞬間に私の頭上にいた男が吹き飛んだ


「なっ……何すんだよっ!」


バギッ!


「やっやめっ……! 助けて、許し…て……」


ドガッ! ゴキッ!


骨を砕く音が響く度に男の情けない声が耳に届く


「──で、こいつをどうするの?」


男の襟首を掴んだまま天音が振り向いた


顔や着ていた服には返り血が着いている


「そうですね…、では、裏道の森林の中に縛って放置してください。 後は"あの人達"に任せましょう」


男を指差して私はニッコリ笑う


「だ……だず、げ…で……」


男は死んでいなかった


顔が血と涙と鼻水でグシャグシャになっている


「貴方は既に私の復讐の用済みです。 ──地獄で彼らの末路を見ていていて下さいね」


天音に引きずられ家を出ていく男の顔は絶望に包まれていた


「……フフッ」


私はその場で笑い続けた後に携帯を取り出した


今では珍しいとされる閉じて開く形式の携帯


その携帯の連絡帳を開き、ボタンを押す


プルルルルップルルルルッ……ガチャッ


「私です。 "掃除"を頼みます」


『──おぅ』


ガチャッ


場所は聞かなかったから、わかっていたんだろう


……やはり、そうですか