玄関に向かうとドアノブがガチャガチャと動いていた
私は溜め息をついてドアの鍵を開ける
「──そんなに焦らないで下さい。 今、開けましたか……」
私は最後まで言いきることができなかった
私がドアに触れるよりも先にドアが開き、伸びてきた手が私の首を掴んだからだ
私はその場で押し倒された
ギリギリと両手で首を絞めてくる"男"に私は笑顔を向けた
絞められているのに不思議と苦しくはない
「随分と斬新な挨拶ですね。 今日は何かご用ですか?」
確か、最後に会ったのは一ヶ月前の事だ
醜く肥えた身体にボロボロの服
体臭と混ざり悪臭が鼻を通過した
この男はギャンブルで借金を抱えている
現在は数日では払えない程の金額を背負っているのだ
──まぁ、この男をここまでにしたのは私なんですが
「金を……金を寄越せ!!」
「……フフッ」
何度も金金、とせがむ男は端から見ても滑稽だった
「残念ですが、私は貴方にお金を貸しません。 だから、あの時、忠告をしたでしょう? 渡したお金はギャンブルに回さなければ借金はなくなる、と。
なのに、欲求の為に増やしたのですから。 自業自得、ですよ」
「貴様、俺を騙したのか!!」
「騙すも何も、私はお金を増やす方法を教えただけですよ? どこで、間違えたのですか?」
「黙れぇっ!! よくも、俺を……殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すっ!!」
「──天音」
男の声が雑言に聞こえてきた
私は表情を戻し、天音を呼ぶ